本作の特異さに
リアルとフィクションが
綯い交ぜにされていることを
前のページでも挙げましたが、
それがよく現れるのは
サバイバルゲームのシーンです。
それは“ゲーム”であるはずなのに
ペイント弾でもBB弾でもない。
銃声が鳴り、次の瞬間、
息を引き取ったかのように
地面に真っ直ぐ倒れる。
その倒れ方は
何の派手さ(演技っぽさ)もなく、
リアル。
このように
『息を殺して』では
フィクションとリアルが
同時進行で描かれます。
戦争の再現かのような
サバゲーを不思議な感覚で観ていたら、
「生きて帰れたら結婚しよう」
ヒロインにプロポーズからの戦死
という戦争映画定番の流れを見せ、
ふたたびフィクションを醸し出す。
どちらにも振り切れない、
リアルとフィクションの中間を
行ったり来たりするような演出に
五十嵐監督の才能が垣間見えます。
おそらく、
こうしたところから
「浮遊感」
も生まれるのだと思いました。