いかがでしたか。
アトリエでストゥシェミンスキが
いつものように絵画制作に
取り掛かろうとした瞬間、
白いキャンバスが
真っ赤に染まる
オープニングシーン。
スターリンの赤い垂れ幕が
窓を覆い尽くすことによって、
キャンバスの中に
絵筆をつけられる場所がなくなる。
社会主義勢力の伸長と
芸術家生命の危機が
訪れることを暗示させていますが、
冒頭から作品の主題や展開を
簡潔に表現する
このアンジェイ・ワイダの筆さばき!
さすがの一言です。
作品全体で描かれるように
ストゥシェミンスキの芸術家
(=一人の人間)としての抵抗が
本作の第一の魅力ですが、
もう一つの顔、
美術理論家・教育者
としての一面にも惹かれます。
劇中でも
度々挟まれる芸術に対する
考え方はどれも印象的で、
それが同時にこの『残像』の
魅力にもなっていると感じました。
90歳の作品にして遺作。
まさに有終の美を飾る、
素晴らしい作品だと思います。