いかがでしたか?
赤がキャロルからテレーズへ
移り変わる様子の美しいこと!
レコードを渡すシーンで
ふたりの衣装が
クリスマスカラーになっていたり、
最高です(涙)
また原作とは
異なるシーンが多いです。
例えばテレーズが
自転車を押すリチャードと
同性愛について話すシーンが
ありましたが、
原作では凧揚げをしています。
凧が高く揚がる様子は、
同性愛に理由を求めるリチャードと、
一目でキャロルに恋をした
テレーズというふたりの気持ちが
離れる様子にも思えます。
凧(=キャロル)に引っ張られる
テレーズの様子が印象的ですが、
原作のこの場面は
凧の糸をリチャードが切って
テレーズが怒る、
という終わり方に。
映像化してほしかった…
とはいえ原作では
舞台美術家を目指す
テレーズの視点のみでしたが、
映画では
写真家という設定にすることで、
キャロル、テレーズ
それぞれの視点による枠構造となり、
ガラス越しのショットの多用など
監督のセンスが光っていました。
ケイト・ブランシェットと
ルーニー・マーラが
見惚れるほど綺麗、
演技も素晴らしかったです。
50年代を現代に甦らせた
美術やファッションは見事、
こだわりのガラス越しのショットも
美的な嗜好が合いました。
ふたりのラブストーリーを
彩るデコレーションは
本当にただただ「美しい」
の一言でした。
ですが
見終わって物足りなさを
感じてしまったことも
正直な感想です。
それはドラマの部分に
理由があると思います。
『キャロル』の原作は
パトリシア・ハイスミスが
’52年に発表した小説です。
同性愛という題材から
名前を変えて
出版しなくてはならなかった
ことからも分かる通り、
当時のそれは
今以上に切実な問題でした。
こういったことは
頭では理解している
つもりなのですが
心ではなかなか
共振してくれません。
映画が観られるのは
現代なのですから
もっと生々しく、
周囲の偏見や
ふたりの障壁を
描いて欲しかったです。
このテーマを表現したい!
という「切実さ」を
もっと感じたかったです。
いかがでしたか?
TBSラジオ「たまむすび」で
町山智浩さんが解説
されていましたが、
『キャロル』は
パトリシア・ハイスミスの実体験を
基に書かれただけでなく、
『見知らぬ乗客』や
『太陽がいっぱい』でも
実は同性愛が描かれていたこと、
それがパトリシアの死後に
明らかになる前から、
映画評論家の淀川長治さんは
看破されていたこと等、
町山さんの解説で
驚きの事実を知る事が出来ました。
映画『キャロル』は
同性愛=精神病とされていた
時代の「闇」を描くのではなく、
極めてシンプルに
極めて美しく、
そして儚くて尊い
「光」を描いていたと思います。
ただ、
それが私(ペップ)の気持ちを
揺さぶったか?といえば、
そうではありませんでした。
音楽・衣装・撮影等の美しさに
もちろん異論はありません。
ですが、
それは木でいえば「枝葉」の部分。
「幹」にあたる物語は
極めてシンプルな「恋愛」(=不倫)。
物足りなさと同時に
高評価に釈然としないものを感じました。